俺たちは親の都合で引き裂かれた
ロミオとジュリエットではないのだが、俺たちは親の都合で引き裂かれた。
俺の親父はあるゼネコンの専務をしていた。
彼女の親父は、敵対するゼネコンの社長だった。
ひとつの公共事業の入札から、俺たちは引き裂かれた。
それは、俺の親父が所属する会社が受注をするはずだったのだが、彼女の親父が社長を務める会社にその公共事業をさらわれたからだった。
その頃俺は、大手アパレルでニットのMDを勤めていて、彼女は俺の部下であるデザイナーだった。
仕事を通じて俺たちはお互いを尊敬しあい、人としてお互いにどうあるべきかと言う接し方をしていた。
その感情がいつしか恋心に変わるまで、そんなに時間はかからなかった。
そして、お互いの家庭の事情を知ったときに、俺たちは自主独立を目指したのだった。
しかし若い俺たちは、会社ではその成績から大事にされていたが、プライベートでは滅茶苦茶な事になっていた。
前述のような出来事があり、俺たちは行き場を失いつつあったからだ。
そんな中でも、仕事だけはきっちりとこなし、俺たちは社長賞をもらうほどの仕事をしていたのだった。
周りの人達からは、いつ結婚するのかと言わるようにもなっていたのだった。
しかし、実際には別れが迫っていることは、俺たち二人が一番知っていたとい言うわけだった。
十月の半ば、ちょっと寒い日だった。
彼女から俺に、話しがあると言ってきた。
俺は“いよいよ”だと思った。
俺は、男らしくなく、この話を避けてきたのだが、彼女の家庭がそれを許さなかったのだろう。
俺は彼女の家に呼ばれ、娘と別れろと執拗に迫られたのだった。
俺は返事をせず、彼女の家を出た。
俺の車の前で、大きな荷物を抱える女性がいた。彼女だった。
しかし、俺はそれを無視して車に乗り込み、発進したのだった。
こうしないと、俺の親父も、彼女の親父もどうすることもできなかったからだ。
あれから五年、今、俺と彼女は一緒に暮らしている。お互いの親父の会社が倒産してしまったからだ。
何とも割りきれない部分はあるのだが、今、俺たちは幸せだ。
俺たちを不幸にした、親父どうしの闘いは不景気と言うとんでもない敵に勝利をさらわれ、俺たち二人には漁夫の利をもたらしてくれたと言う訳だったのだ。
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